折衷的カウンセリング

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折衷的カウンセリング (eclectic counseling)

折衷主義カウンセリング

 

 

 

【折衷的カウンセリングとは】

 

・折衷的カウンセリングとは、特定のカウンセリング理論、技法にとらわれずに、

目の前にいるクライエントのために、複数のカウンセリング理論、技法を駆使して、

そのクライエントに最善の方法で接して行こうというカウンセリングの理論であり、

カウンセラーの態度、立場、哲学である。

統合主義カウンセリング、選択主義カウンセリングとも言う。

 

 

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◆1955年にオールセン(M.M.Ohlsen)は、

支持的な方法と非支持的な方法とを統合することを記している。

支持的技術によって診断を、非支持的技術によって感情への反応を目指した。

彼、オールセン(M.M.Ohlsen)は別のクライエントに別の技術を使うばかりではなしに、

同一のクライエントに対しても、時期によって、これらを交互に使うことを考えた。

※文献「グループカウンセリング1972年」 M.オールセン 中野・伊東博/翻訳 誠信書房

 

 

◆ラガルス(A.A.Lagarus)は、クライエントのパーソナリティが

次の七つの機能を統合したものからなると考え、

これらに対してかわるがわる働きかけることを提案した。

 

1:行動

2:情動プロセス

3:感覚

4:イメージ

5:認知

6:対人関係

7:生物学的機能(Biggs)

 

 

現在(2004年)ではカウンセラーの30~50%が折衷的カウンセリングを行っているといわれている。

しかしこれには、賛否両論あり、混乱を起こしかねない。

これを防ぐためにはカウンセラーの技術のレベルが高くなければならない。

 

 

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◆最近では、ジェラルド・イーガン(Gerard  Egan)によるイーガン・アプローチ(1990年)が

各種の理論から採った「問題を扱うためのモデル」を系統的に使うことによって

安定した援助を出来る点で注目されている。

問題を正確にとらえ、問題をおこしている状態を明確にして、

問題を起こす機会を減らそうというものである。

対人関係の態度とコミュニケーション技術を統合し、目標を定めることで、影響力・行動を強調する。

発展的折衷的カウンセリングまたは系統的折衷的カウンセリング Feltheam and Drydenn

 

 

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◆國分康孝によれば、カウンセラーは精神分析、来談者中心療法、行動療法、特性・因子理論、

実存主義的アプローチ、交流分析、ゲシュタルト療法、論理療法など八つの方法の理論と技法を

身につける事が必要である。

この中で、國分が特に強調するのは精神分析、来談者中心療法、行動療法の三つである。

この三つの理論と技法に精通していれば、基本的にはほとんどのクライエントを援助できる。

 

精神分析理論でクライエントの問題をつかみ、

来談者中心療法でクライエントとのリレーション(関係) を作り、

行動療法の技法を用いてクライエントの問題解決を援助する。

 

折衷主義の立場に立つカウンセラーは、

少なくともこの三つの理論と技法を自分のものにしておく必要がある。

 

◎ マイクロカウンセリング(アレン・アイビイ)

◎ ヘルピングカウンセリング(ロバート・カーカフ)

◎ 論理療法(アルバート・エリス)

 

 

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【アメリカにおける折衷的カウンセリングの動向】

 

アメリカにおける折衷的カウンセリングの動向としては、

・マイクロカウンセリング(アレン・アイビイ)

・ヘルピング(ロバート・カーカフ Robert R.Carkhuff)

・論理療法(アルバート・エリス)

 

以上の三つをあげることができる。

 

 

 

【アイビイのマイクロカウンセリング】

・さまざまなカウンセリングの技法を受身的なものから能動的なものへと、直接的、段階的に並べて

クライエントの問題によって段階的に技法を選択して面接を行う。

選択主義的な折衷主義である。

 

 

【カーカフのヘルピング】

・カウンセリングを援助活動(ヘルピング)ととらえ、

援助過程をかかわり技法、応答技法、意識化技法、手ほどき技法の4段階にまとめた、

統合主義的な折衷主義である。

 

 

【エリスの論理療法】

・それまでのさまざまなカウンセリング技法を、ビリーフの修正に効果が上がるように

統合した折衷主義である。

 

 

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◇さまざまな悩みや問題を抱えて相談に訪れるさまざまな個性のクライエントに対して、

ただ一つのカウンセリング理論・技法だけに固執して面接を行うのは、

理論中心のカウンセリングであり、真の意味での来談者のためのカウンセリングではない。

もちろん、極端に自分の専門から離れた問題をもちこんだクライエントについては、

その問題を専門とする他のカウンセラーにリファーしなければならないし、それが倫理である。

 

しかし、さまざまな個性をもったクライエントがさまざまな問題を抱えているのが現実であるから、

カウンセラーが自分の好みに合わない問題を抱えているクライエントには面接しないというのでは、

カウンセリングの理論のためにクライエントを探しているようなもので、

カウンセラーが自分のためにカウンセリングを行っているということになる。

 

ある特定のカウンセリング理論・技法の研究者であるならばそれで良いであろうが、

カウンセラーの仕事は臨床が主である。少しでも多くのカウンセリング理論や技法に精通し、

より多くの症例に接して自分の技量を鍛え、クライエントの個別の問題に対して、

それまでの自分の全経験の中から、そのクライエントの問題に最も適する理論・技法を選んで

面接に当たるのが、本来の意味でのカウンセリングではないだろうか。

このように考えるのが折衷的カウンセラーの立場である。

 

 

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【折衷主義の立場に立つカウンセラーの心構え】

 

・折衷的カウンセリングはさまざまなカウンセリング理論の技法を用いるために、

ややもするとそれらの技法をモザイク的に並べることになってしまうことがある。

これを防ぐためには、多くのカウンセリング理論の中から、

核になる理論を一つか二つ決めておくと混乱しなくて良いであろう。

 

また、さまざまな技法に振り回されずに、それらの技法を使いこなすためには、

自分の哲学をきちんともつことが重要である。

人間観、治療観が揺れ動くようではカウンセリングはできない。

自分のよって立つ哲学をはっきりさせることで、

人間観、治療観をゆるぎないものにしておく必要がある。

 

さらに、折衷的カウンセラーの中にはさまざまな理論や技法を知っているだけに、

一人のクライエントにさまざまな技法を試してみようとして、

クライエントを抱え込みすぎるカウンセラーが現れる可能性は否めない。

自分の手にあまるクライエントをベテランのカウンセラーにリファーすることも、

カウンセラーとしての倫理であり、勇気である。

 

 

 

 

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※【参考文献】

「カウンセリング大事典」2004 小林司/編 新曜社
「マイクロカウンセリングの理論と実践」2004 アレン・E.アイビイ/著 風間書房
「臨床心理学キーワード」2005 坂野雄二/編 有斐閣双書

 

 

 

このブログ記事について

このページは、sscが2010年8月 6日 00:01に書いたブログ記事です。

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