絵画療法|アートセラピー

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絵画療法|アートセラピー (art therapy)

 

 

◇広い意味での芸術療法(arts therapy)のうち、主として絵画を媒体として行われる心理療法。

 

 

◇長期入院患者に対するレクリエーション療法として行なわれる場合と、

非言語的精神療法(nonverbal psychotherapy)として行なわれる場合とがある。

絵画療法は言語的心理療法や薬物療法などに対して補助的な治療的意義をもつが、

若年児など言語によるコミュニケーションが困難なクライエントにあっては、

治療的アプローチの中心ともなりうる。

 

 

◇絵画療法では以下に述べる絵画表現の特徴を利用して、

心身に障害のある者の診断と治療を行なう。

まず、描画表現には、言語では表現できない感情が投影されたり、

意識下におさえられている問題が象徴的に表現される場合がある。

そのため、描画を通じて、治療者が患者の問題点を把握したり、

患者が自らの内面の心理に気づくことができるほか、

表現すること自体がカタルシス(浄化)の効果を有する場合がある。

 

 

◇描画表現は、個性的であると同時に、

一定のパターンに従って表出が行なわれる傾向がある。

例えば・・・

木や人物や風景の描画は、描く人の年齢や発達に応じて一定の特徴を示す。

また統合失調症や躁うつ病あるいは神経症者の描画にそれぞれの特徴があることも知られている。

 

表現された描画をみて、人の発達段階や精神状態をある程度、把握することも可能である。

また、患者の描画の変化を継時的に追うことによって、

症状の経過や予後についての知見が得られる場合もある。

 

 

 ◇描かれたものは、治療者にも患者にも属さない第3の領域として存在する。

そのため、治療者と患者とは、描かれたものについて、

感じていること、気づいたことを、余裕をもって話し合うことができる。

 

さらに、治療者と患者の関係の中で、患者の内的なイメージを吟味することで、

患者が自分ひとりでは受け入れる事ができなかった感情や感覚に触れ、

洞察を深めることができる。

 

患者が言葉をとおしては感じられなかった自分らしさに気づき、

治療者もそれを感じとって行くことが、

人との信頼関係を回復させることにもつながって行く。

 

 

 

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◇絵画療法の技法を大きく分けると、個別法と集団法、自由画法と課題画法などがある。

自由画法とは「今、心に浮かぶこと、気になっていることなどを何でもいいから、

自由に絵にしてみてください」などという教示によって描いてもらう。

人によっては、自由に描くことが、かえって困難な場合があり、

絵画療法の適応の可否を確かめる意味からも次のような方法をとる場合がある。

 

 

 

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(1)空間分割法

 

・画用紙に患者が縦横の線を引いて分割する。

色彩分割法では、そこに生じた小空間にクレヨンで色彩をつける。

それらを患者と治療者が交互に行なう場合もある。

また、先に治療者が患者の目の前で画用紙に枠を描く方法を「枠づけ法」と呼ぶ。

 

 

(2)なぐり描き法

 

・患者が自由になぐり描きをし、それに投影したものを彩色する、スクリブル(scribble)法や、

これを患者と治療者が交互に行なう、スクイッグル(squiggle)法がある。

「枠づけ法」が併用される場合が多い。

 

 

(3)バウムテスト

 

・コッホ(K.Koch)によって創案された心理テスト。樹木画法ともいう。

画用紙に鉛筆で樹を1本描いてもらうことによって、

患者の発達段階や人格的側面を理解することに役立つ。

 

 

(4)人物画法

 

・人間の全身像を描くもの。

グットイナフ(F.L.Goodenough)によって、

子どもの知的水準や発達段階をとらえるための「心理検査」とされた。

 

 

(5)風景画法

 

・徳田良仁らは、バック(J.N.Buck)のHTP法(家と木と人)を発展させ、

1枚の紙にこれら三つのアイテムを描く、「統合的HTP法」を考案した。

 

・中井久夫は、「風景構成法」

(画用紙に枠づけし、患者がサインペンで、川・山・田・道・家・木・人・花・動物・石を順に描き、

風景を完成させる。他に描きたいものがあればそれを付加し、クレヨンで色彩をつける)を創案した。

 

 

 (6)家族画法

 

・バーンズとカウフマン(R.C.Burns & S.H.Kaufmann)は、

患者の家族ついての情報を得ることを目的として「動的家族描画法」を開発した。

 

・岩井寛は、患者個人の家族イメージを重視し、「マルと家族画法」を提唱した。

 

家族療法では、これらを家族の成員がそれぞれ個別に描くことにより、

家族間のコミュニケーションの媒体として用いることがある。 

 

 

 

 

 

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【カール・グスタフ・ユング】 Carl Gustav Jung (1875年7月26日~1961年6月6日)

 

スイスの精神科医・心理学者。

深層心理について研究し、分析心理学(通称・ユング心理学)の理論を創始した。

スイス、ボーデン湖畔のケスヴィルでプロテスタント牧師の家に生まれる。

少年期は己の内面に深い注意が向けられ、善と悪、神と人間についての思索に没頭し、

学生時代はゲーテ、カントやニーチェの著作に感銘を受けた。

内的な基盤を持たない形式的な信仰というものに疑問を感じ、

牧師という職を継ぐことを特には望まず、名門バーゼル大学で医学を学んだ。

 

生理学的な知識欲を満たしてくれる医学や、歴史学的な知識欲を満たしてくれる考古学に

興味を抱き、友人と活発に議論を交わし、

やがて人間の心理と科学の接点としての心理学に道を定めた。

精神疾患の人々の治療にあたるとともに疾患の研究もすすめ、

特に当時不治の病とされた分裂病(統合失調症)の解明と治療に一定の光明をもたらした。

ヒステリー患者の治療と無意識の解明に力を注いでいたフロイトと一時親しく意見を交わした。

1948年に共同研究者や後継者たちとともに、スイス・チューリッヒにユング研究所を設立し、

ユング派臨床心理学の基礎と伝統を確立した。

またアスコナで開催されたエラノス会議において、主導的役割を演じることで、

深層心理学・神話学・宗教学・哲学など、

多様な分野の専門家・思想家の学際的交流と研究の場を拓いた。

 

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※【参考文献】


「カウンセリング大事典」2004 小林司/編 新曜社

 

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このページは、sscが2010年9月 1日 00:25に書いたブログ記事です。

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