心理学: 2010年8月アーカイブ

逆転移|対抗転移

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対抗転移 逆転移 (counter-transference)

 

 

◇被分析者に対する分析者の無意識的反応の総体

 

◇特に被分析者の転移に対して、分析者自身の無意識的、不合理、幼児的な感情、

思考、態度が、被分析者に繰り返し向けられる現象。

 

 

 

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◇対抗転移は、1910年にフロイトにより初めて精神療法に導入された概念で、

転移と同様に重要な役割を果たしている。

 

フロイトは、「被分析者が分析者に対して向ける特殊な感情や態度のこと」を「転移」と呼び、

これとは逆方向に、「分析者の側が無意識のうちに被分析者に対して個人的な感情を向けたり、

私的な反応をすること」を「対抗転移」(逆転移)と呼んだ。

 

  

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 ◇被分析者の無意識の葛藤を正しく解釈するのに重要な分析者の中立性を

対抗転移が損なう恐れがあるとフロイトは考えた。

そこで、当初対抗転移を分析者の抵抗と考え、被分析者を治療するうえでの障害であるから、

できるだけ避けるべきであり、分析、あるいは少なくとも自己分析によって、

消滅されるべきだ、とされた。

 

 

◇これに対してユング(1875~1961)は、分析者も人間である以上、

いかに受け身的、中立的態度を保持しようとしても、ときには被分析者に深く影響されざるを得ない。

だから、この事実を受け入れ可能な限り、意識化するほうが良い、とした。

そこで、分析者が自己の無意識過程を熟知するために教育分析を受ける必要があることを力説した。

 

 

このように、対抗転移には、歴史的に治療の妨げになるので出来るだけ排除しようとする立場と、

対抗転移を自覚、理解し、柔軟適切に治療に活用しようとする立場と二つがある。

 

当初、対抗転移は、内容が分析者自身にかかわることであるだけに、

あいまいにされてきたきらいがあった。

しかし、1950年以降、治療が人間関係によることがますます理解され、

分析者の反応がより重要視されるようになったことにより、

治療を進めるうえで、対抗転移も積極的な意義があるものとして注目されるようになった。

 

 

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◇ハインリッヒ・ラッカー(Heinrich Racker)

・ハインリッヒ・ラッカーは、「転移状況は必ず対抗転移状況を誘発する。

そしてそれは普遍的な、そして個人に固有な無意識の法則に従っている」と述べ、

対抗転移の特徴を次の3つにわけた。

 

a・・・転移と同様に分析作業にとって最大の危険物である。

b・・・患者を理解する最上の手段である。

c・・・解釈する人としての分析医を補助するものである。

 

 

◇アニイ・ライヒ(A.Reich)

・アニイ・ライヒは、「対抗転移は(ただ不可解な事象であるだけでなく、また)、

分析治療に必要な前提条件でもあるのだ。

もしもそれが存在しないならば、分析治療に必要な才能や興味が失われてしまう。

しかし、それは、影のように背景にとどまっていなければならない」と述べ、

対抗転移の重要性と特質とを説明している。

 

 

◇メニンガー(K.Menninger)

・メニンガーは、対抗転移の一般的な現れ方を次のように4つあげている。

 

1・・・嫌悪感、不快感、不安、抑うつ感、無力感、焦り、などの感情。

2・・・共感できない特定の話題にとらわれる、眠くなる、身構える、自分のことにとらわれる

    遅刻する、度忘れ。 

3・・・過度に好意を向ける、援助したがる、恋愛的、性愛的な感情が続く。

4・・・患者の夢を見る。

 

◇このように対抗転移を理解し、この存在に注意を払っていなければならないが、

ただ、対抗転移を恐れるあまり、治療が不毛になってはならない。

また、自分の対抗転移の分析に夢中になりすぎて、治療本来の対象を忘れてしまったり、

知的に分析するだけで事足れりという態度は治療の妨げになるので、

分析者はたびたび教育分析を受け、治療過程を見つめなおす必要がある。

 

 

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◇現在ではシンガー(E,Singer)の立場が一般に広く受け入れられている。

対抗転移は、「治療者が自分自身について何かを知ったり、学んだりすることへの、

治療者自身の抵抗の現れとして、また自分自身のある側面を忘却し、

未解決の葛藤を隠しておきたいという願望の反映として考えられる」と述べている。

 

 

◇精神分析療法は、病める人と健康な人との間の相互関係とみなされがちであるが、

本来は、2人の人格の相互関係である。

二つの全人格がそれぞれに、分析状況の一つ一つの出来事に影響しているのである。

したがって、治療関係において、分析者は、被分析者の転移や防衛を理解しようとすることだけでなく

自分自身の中におこっているいろいろな対抗転移を認識、コントロールすることが、

被分析者の理解につながる、という相互作用を重要視する必要がある。

 

 

 

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【カール・グスタフ・ユング】 Carl Gustav Jung (1875年7月26日~1961年6月6日)

 

スイスの精神科医・心理学者。

深層心理について研究し、分析心理学(通称・ユング心理学)の理論を創始した。

スイス、ボーデン湖畔のケスヴィルでプロテスタント牧師の家に生まれる。

少年期は己の内面に深い注意が向けられ、善と悪、神と人間についての思索に没頭し、

学生時代はゲーテ、カントやニーチェの著作に感銘を受けた。

内的な基盤を持たない形式的な信仰というものに疑問を感じ、

牧師という職を継ぐことを特には望まず、名門バーゼル大学で医学を学んだ。

 

生理学的な知識欲を満たしてくれる医学や、歴史学的な知識欲を満たしてくれる考古学に

興味を抱き、友人と活発に議論を交わし、

やがて人間の心理と科学の接点としての心理学に道を定めた。

精神疾患の人々の治療にあたるとともに疾患の研究もすすめ、

特に当時不治の病とされた分裂病(統合失調症)の解明と治療に一定の光明をもたらした。

ヒステリー患者の治療と無意識の解明に力を注いでいたフロイトと一時親しく意見を交わした。

1948年に共同研究者や後継者たちとともに、スイス・チューリッヒにユング研究所を設立し、

ユング派臨床心理学の基礎と伝統を確立した。

またアスコナで開催されたエラノス会議において、主導的役割を演じることで、

深層心理学・神話学・宗教学・哲学など、

多様な分野の専門家・思想家の学際的交流と研究の場を拓いた。

 

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【ジークムント・フロイト】(ドイツ:Sigmund Freud 1856年5月6日~1939年9月23日)

 

オーストリアの精神分析学者。オーストリアの白人系ユダヤ教徒アシュケナジーの家庭に生まれた。

神経病理学者を経て精神科医となり、神経症研究、自由連想法、無意識研究、

精神分析の創始を行い、さらに精神力動論を展開した。

非常に詳細で精密な観察眼を示す症例報告を多数残した。

それらは、現在においても次々と新しい角度から研究されている。

フロイトの提唱した数々の理論は、のちに彼の弟子たちによって

後世の精神医学や臨床心理学などの基礎となったのみならず、

20世以降の文学・芸術・人間理解に広く甚大な影響を与えた。

弟子たちは、フロイトの考え方のどこかしらを批判した上でこれを受け継ぎ、

様々な学派に分岐し、それぞれ独自の理論を展開していった。

 

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※【参考文献】

「転移と逆転移」2000 H,ラッカー/著 岩崎学術出版社
「カウンセリング大事典」2004 小林司/編 新曜社
「図説 現代心理学入門」三訂版2007 金城辰夫/監修 培風館 
「ユングの分析技法」転移と逆転移をめぐって マイケルフォーダム/編 培風館
「転移・逆転移―臨床の現場から」 氏原寛/編 人文書院
「分析空間での出会い―逆転移から転移へ」1998 松木邦裕/著 人文書院

 

ハンス・セリエ

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ハンス・セリエ  Hans Selye (1907-1982)

 

 

 

【ハンス・セリエ】ハンス・セリエ Hans Selye (1907-1982)

 


・セリエは、カナダの科学者でキャノンやベルナールなどの研究を発展させ、

刺激に対する生体の反応について体系づけ1936年Natureという科学雑誌に「ストレス学説」を発表。

 

日常的に用いられるストレスという言葉は、有害な環境因子(ストレッサー)を意味するが、

ハンス・セリエが導入したストレス概念は、有害・無害、有益・無益を問わず、

何らかの刺激に対する生体の非特異的な反応を意味するもの。

 

「ストレス」という言葉は生物が外的あるいは内的な刺激に適応していく過程を概念化したもの。

適応の過程では自律神経や各種のホルモンが働く。人の意志の働く。

 

 

セリエの「 stress without distress」という著書に "Stress is the spice of life" という文章がある。

 

「ストレスは人生のスパイスである」という意味。

 

彼はまた "Absence of stress is death" とも述べている。

「ストレスの欠如は、死である」という意味。

 

 

ストレス(ストレッサー)には有害なものだけでなく有益なものもあり、

いずれにしても生きていく上で避けて通ることが出来ないものなら、

悪と善の区別することなく丸ごと受け入れて、乗り切ることが大切だということを説いている。

 

 

 

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【ストレス】

 

 

◆心理学的ストレス理論

・生活の中で日常的に感じるストレスを心理学的に理解してその対処を考える理論。

 

◆ストレスの心理学的理解

・ハンス・セリエ(1907~1982)によって提唱された「ストレス」の概念は、

外界からもたらされる非特異的な身体的反応を総称するものであった。

 

ところが・・・

セリエのストレス学説は基本的に生理学的なストレスのメカニズムに焦点を当てており

心理学的要因についてはほとんど考慮されていなかった。

 

その後の研究においては・・・

いずれもストレスが生起する過程において心理学的要因が重要であることが報告されている。

 

現在「心理学的ストレス」の定義として最も広く支持されているのは、

アメリカの心理学者「R・S・ラザルス(1922~2003)」の定義である。

 

ラザルスは、ストレスを、「外的状況の特性や内的状態ではなく、環境の要求とその認知、

およびそれに対する対処能力の認知との複雑な相互作用からもたらされる過程を指す」と定義した。

 

 

 

◆心理学的ストレス反応は・・・ 

情動的な変化を中心とする反応であり、

情動的反応に伴って生じる認知的反応や行動的反応を含んでいる。

 

  

 

 

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※【参考文献】

「臨床心理学キーワード」2005 坂野雄二/編 有斐閣双書
「認知療法・認知行動療法カウンセリング」2006 伊藤絵美/著 清和書店
「 stress without distress 」 ハンス・セリエ/著

ラザルス

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ラザルス  Lazarus,Richard S. (1922-2003) アメリカの心理学者

 

 

 

【R・Sラザルス】 (1922-2003) 

 

・ラザルスは、心理的ストレス研究の第一人者であり、

ストレスに対する認知の役割を重視した理論を提唱している。

 

 

ストレスの程度について・・・

 

1:出来事の脅威度や影響性をどのようにとらえているか

2:直面する問題をどの程度コントロールできると認識しているか

3:どのような具体的対応を行ったかの個人差に強く影響される

 

 

ラザルスらは、この理論に基づく実証的研究を幅広い年齢層に対して行い、

心理的ストレス発生のメカニズム解明に大きく貢献した。

 

 

 

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【ストレス】

 

◆心理学的ストレス理論

・生活の中で日常的に感じるストレスを心理学的に理解してその対処を考える理論。

 

◆ストレスの心理学的理解

・ハンス・セリエ(1907~1982)によって提唱された「ストレス」の概念は、

外界からもたらされる非特異的な身体的反応を総称するものであった。

 

ところが・・・

セリエのストレス学説は基本的に生理学的なストレスのメカニズムに焦点を当てており

心理学的要因についてはほとんど考慮されていなかった。

 

その後の研究においては・・・

いずれもストレスが生起する過程において心理学的要因が重要であることが報告されている。

 

現在「心理学的ストレス」の定義として最も広く支持されているのは、

アメリカの心理学者「R・S・ラザルス(1922~2003)」の定義である。

 

ラザルスは、ストレスを、「外的状況の特性や内的状態ではなく、環境の要求とその認知、

およびそれに対する対処能力の認知との複雑な相互作用からもたらされる過程を指す」と定義した。

 

 

◆心理学的ストレス反応は・・・ 

情動的な変化を中心とする反応であり、

情動的反応に伴って生じる認知的反応や行動的反応を含んでいる。

 

  

 

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※【参考文献】

「臨床心理学キーワード」2005 坂野雄二/編 有斐閣双書
「認知療法・認知行動療法カウンセリング」2006 伊藤絵美/著 清和書店
「 stress without distress 」 ハンス・セリエ/著

アルバート・エリス

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アルバート・エリス 

 

 

 

【アルバート・エリス】 Ellis,Albert (1913年9月27日~2007年7月24日)

 

 

・アメリカの心理学者。

 

論理療法の創始者であり、ニューヨーク市で論理療法研究所を主宰している。

エリスの理論では、人間の認知・感情・行動は互いに影響し合っており、

論理療法は、この3つの側面を統合的にとらえるという特徴をもつとしている。

 

・論理療法では、クライエントの非現実的な信念や思考過程の修正を求め、

新しいシェマを通じて環境と関わることを目指す。

エリスは結婚、家族、性の問題についての治療、研究を積極的に行っている。

 

 

 

 

 

 

 

※【参考文献】

「臨床心理学キーワード」2005 坂野雄二/編 有斐閣双書
「論理療法入門」1998 ウィンディ・ドライデン/著 川島書店
「実践論理療法入門」1997 ウィンディ・ドライデン レイモンド・デジサッピ/著 岩崎学術出版
「論理療法」1981 アルバート・エリス R・A・ハーバー/著 川島書店
「自分をみじめにしないためには」1996 アルバート・エリス/著 川島書店
「自己変革の心理学」1990 伊東順康/著 講談社現代新書
「自己発見の心理学」1991 国文康孝/著 講談社現代新書

 

 

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