心理学講座: 2010年10月アーカイブ

合理化|防衛機制

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合理化(rationalization)|防衛機制 

 

防衛機制 (defense mechanisms)

 

 

 

【合理化】

 

・自分の行為の本当の動機を隠して、もっともらしい意味づけを行うことによって、

自らを正当化したり、罪悪感から免れるためのしくみ。

 

 

 

◇合理化は、フロイトによって明らかにされた心の防衛機制のひとつだと思われている。

確かに彼(フロイト)は、夢の二次的加工を行う自我の働きの一つとして、合理化を考えている。

 

この語は、ジョーンズ(F.Jones)「日常生活における合理化」(1908)の中に用いられてから、

精神分析学で一般化されるようになった。合理化はごく普通にみられる心理過程である。

誰でもが、自分の言動を合理的に説明できるものであり、

また、あらゆる行動をふつうに合理的に説明できるからである。

 

 

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◇例えば、自分が与えられたある課題に一生懸命取り組んだが、成功しなかった時、

自分の至らなさを棚上げして、自分を取り巻く状況のせいだと思い込んだり、

失敗した要因が自分の努力とは無関係なところにあったと解釈したりする心の動きを合理化という。

それにより、自ら心の痛みを感じないですむのである。

 

◇アンナ・フロイトは、「自我と防衛」(1937)の中で、上級生の妨害により自由に活躍できなかった

フットボール少年が、小説家として生活しようと企てを考え、文学的な成果を上げていき、

同時にスポーツに対して軽蔑の念を示していったプロセスをあげて、合理化を説明している。

 

◇合理化は、失望感を出来るだけ小さくして、失敗の原因を隠して相手をけなしてしまう、

「酸っぱいブドウの論理」と、

不満足なもの好ましいとして無理に納得し、

現状を無理やりに肯定して失敗してかえって良かったと思い込む「甘いレモンの論理」という、

ふたつに分けられる。

いずれにせよ、自分の行為に対する個人的な責任を免れることができる。 

 

 

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 ◇合理化は、もっともらしい「言い訳」や「口実」をみつけることでもある。

 社会的に容認されない動機も是認されるように置き換えられていく。

 

例えば、溺れている子供を救うために川に飛び込んだ人は、

自分では心から犠牲的な行為であると思っているかもしれないが、

実のところは目立ちたがりの英雄願望に基づいているということもある。

 

しかし、これは無意識のうちに働いているから、これが適応の機制として働き、

それに成功した場合に、本人は自分の行ったこと、

もしくは言ったことの本当の動機を意識していないものである。

合理化がその社会の既成概念、一般的な道徳、政治的な信条、

宗教的な信念によって基礎づけられている場合に、その働きはより強固なものになる。

 

しかし、「昇華」がより高次元の社会的評価につながるものになっていくのに比べると、

合理化は、現状にとどまってしまう傾向が強い。

 

 

 

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 ◇合理化は、厳密な意味では、「防衛機制」には入らない。

なぜなら、防衛機制とは、それを意識することによって不安、深い、苦痛、罪悪感などを

おこさせるような内的危険に対して、心の安定を保つためにそれを無意識化してしまう

自我の働きであるからだ。

 

◇合理化はその欲求の充足そのものに直接立ち向かう機制ではなく、

むしろ欲求充足と防衛機制の間に葛藤が生じたときに、

その葛藤を偽装するために、もしくは葛藤を軽減するために、二次的に使われる防衛機制である。

したがって合理化は、他の防衛機制を強化し補足する役割を担うことが多い、と言えるだろう。

 

 

 

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◇ 合理化は、ごく普通の人に用いられる機制ではあるが、病的な「妄想」も、

しばしば自らを正当化するために用いられる。

フロイトも、妄想を説明するために合理化を使うと主張している。

しかし、彼は誇大妄想、被害妄想、嫉妬妄想などの種々の妄想を関連づけるために、

合理化という言葉を使用することには反対している。

神経症的な合理づけ、強迫症的な合理づけなどがある。

 

 

 

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【アンナ・フロイト】(Anna Freud 1895年12月3日~1982年10月9日)

 

精神分析の創始者・ジークムント・フロイトの娘で、イギリスの精神分析家。児童精神分析の開拓者。

ウィーン生まれ。ウィーンのコッタージ・リセウム(Cottage Lyceum)に学ぶ。

1914年にイギリスに渡り、戻って自分が学んだリセで教鞭をとる。

1918年、父から精神分析を学び、その道に入る。

最初の論文は、1922年発表。1923年から精神分析家としての実践を開始。

同年、父ジークムントが癌である事が判明、以来雑務に支障を来たすようになった父親に代わり、

国際精神分析学会の事務局長、ウィーン精神分析訓練研究所の所長などを引き受ける。

1939年、父親が死去してからは、ますます児童心理学に専念。

メラニー・クラインとの研究上の意見の相違からイギリスの精神分析学会で論争を引き起こす。

その間にも弟子(たとえば、エリク・エリクソンなど)を多数育て、

戦争が子ども達に与えた影響なども調査。

特に、幼児の防衛機制についての研究が名高い。

 

 

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【ジークムント・フロイト】(ドイツ:Sigmund Freud 1856年5月6日~1939年9月23日)

 

オーストリアの精神分析学者。オーストリアの白人系ユダヤ教徒アシュケナジーの家庭に生まれた。

神経病理学者を経て精神科医となり、神経症研究、自由連想法、無意識研究、

精神分析の創始を行い、さらに精神力動論を展開した。

非常に詳細で精密な観察眼を示す症例報告を多数残した。

それらは、現在においても次々と新しい角度から研究されている。

フロイトの提唱した数々の理論は、のちに彼の弟子たちによって

後世の精神医学や臨床心理学などの基礎となったのみならず、

20世以降の文学・芸術・人間理解に広く甚大な影響を与えた。

弟子たちは、フロイトの考え方のどこかしらを批判した上でこれを受け継ぎ、

様々な学派に分岐し、それぞれ独自の理論を展開していった。

 

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※【参考文献】

「カウンセリング大事典」2004 小林司/編 新曜社
「図説 現代心理学入門」三訂版2007 金城辰夫/監修 培風館 
「自我と防衛」1985 A・フロイト/著 誠信書房
「自我と防衛機制」1998 アンナ・フロイト著作集 A・フロイト/著 岩崎学術出版社
「自我論 不安本能論」1970 S・フロイト著作集 S・フロイト/著 人文書院
「フロイト全集 第19巻」2010 S・フロイト/著 岩波書店
*1925-28年 否定、制止、症状、不安、素人分析の問題

「S・フロイト自我論集」1996 ジークムント・フロイト/著 筑摩書房

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